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2019年11月7日

嶋村チョイス!今月のKEY PERSON
Vol 10:: Vi Nguyen Co.,Ltd / CAO MINH KIÊNさん

氏名: CAO MINH KIÊNさん
会社名:Vi Nguyen Co.,Ltd
役職:Vice Director

「嶋村チョイス!今月のKEY PERSON」第10回を始めます!
どうぞよろしくお願いします。それではCAOさん自己紹介をどうぞ!

明るくてとても気さくなCAOさん

CAOさん:名前はカオミンケンです。ベトナム語ではCAO MINH KIÊNです。日本ではKIÊNの発音が難しいので、ケン。ケンは日本にもたくさんいて呼びやすいのでそうしました。
日本生まれ、日本育ち、両親は両方ともベトナム人なのですが、両親は留学生として日本に来て日本の大学を卒業して、そのまま日本の会社に就職してずっと30年~40年日本にいました。その途中で僕が生まれました。僕は幼稚園~大学、就職までずっと日本です。日本の横浜です。
日本に住んでいるベトナム人って意外と固まって住んでいるんですが、僕がいたところはベトナム人が一人もいないエリア、ベトナム人どころか外国人が全くいないエリアで、幼稚園、小学校、中学校までは外国人は学校で僕だけ、中学校は割と大きい中学校だったけど、外国人は僕だけ。名前は日本の名前を持っていないからカタカナで「カオミンケン」。国籍もベトナムのままでした。ずっとカタカナの名前で外国人まるだしでした(笑)
高校、大学に進み、大学では1年間休学してカナダへ語学留学をしました。大学を卒業した後は6年間日本の会社で働きました。
大学を出た後に入った会社はキーエンスという本社が大阪にある会社で、配属は愛知県でした。
愛知県なので自動車メーカーがお客さんで、工場へ行ってこのラインにセンサーを付けましょう!というような営業をしていました。キーエンスで3年営業をやって、その後、父が経営する豆腐屋さんの後継ぎを視野に入れて食品分野に転職を決意しました。
このお豆腐屋さんというのは僕が大学生の時、2007年に父がベトナムホーチミンで立ち上げた会社で、初めは全く継ぐ気はなかったんですが、ちょうどキーエンスで働いていた頃面白そうに感じていたので、転職するなら将来父の会社を手伝うことになった場合を考えて、食品かつ海外に関われるというのをポイントにお米の会社、木徳神糧株式会社へ転職しました。
セブンイレブンの弁当なんかは全部木徳のお米なんです。木徳神糧の何が特別かと言うと、ベトナムで日本米を栽培しているんです。ベトナムでも売るし世界でも売ってます。だからベトナムで日本の豆腐を作るという父のお豆腐屋さんと似ているんです。
木徳神糧では海外事業部に配属されたのでベトナムにも何回も来ました。ジャポニカ米を売るためにシンガポールやアメリカにも行きました。そこで3年働き、サラリーマンを合計6年間やってみて、組織の歯車の一部になるのは自分には向いてないなというのがわかり、それなら思い切って辞めよう、お豆腐屋さんを継ごうと決めました。
会社を辞めた後、アジア流の経営を学ぶためにシンガポールに1年間MBA留学、2015年8月にベトナムに来ました。
ベトナム語は両親から少し習ったのはありましたが、大学でベトナム語の授業があったので、一般教養として初級クラスを取ってました。それで発音記号と挨拶程度は知っていたんですが、ベトナムに来てから本格的に勉強を始めました。

HRnavi本社に遊びに来てくれた時の写真。爽やかな笑顔が似合うCaoくんです

Q.御社の事業紹介を教えていただけますか?
CAOさん:日本の食品をベトナムの工場で製造して、ベトナム国内のスーパー、レストラン、市場で販売しています。商品はメインは豆腐とこんにゃくで、あとはしらたき、納豆、ごぼうです。
主なお客さんは大手のベトナムスーパー、ビンマートやコープマートで、あとはロッテやBIGCなどの外資系、日系はイオンですね。コープはプライベートブランドの形で販売しています。レストランはみんなが思いつくようなチェーン系のベトナムのレストランや、回転鍋の店、日本料理のお店の多くはうちのお客さんです。

本社工場の外観写真

嶋村:じゃあほとんどですね。ライバル企業はあるんですか?
CAOさん:うちのライバルは超どデカい大手企業で、豆腐シェア1位の会社は、タイのTCCグループです。多分タイで2番目に大きい財閥です。そこがベトナムにも進出していてお豆腐をやってるんですよ。シェア2位を飛ばして、3位は韓国最大の食品会社CJという会社なんです。映画館のCGVとかもやっていて、元サムスングループです。
それで2位がどこかというと、うちなんです。うちは豆腐専門なんですけど、1位、3位のアジアの巨人に囲まれて、アップアップしながらやっているという感じです。
3位のCJなんかからすると豆腐はたくさんある商品のうちの一つなので、それほど注力していないとは思うんですが、彼らが本気を出せば、うちの会社はやられてしまうでしょうね。

嶋村:CAOさんはどんなお仕事をされているんですか?
CAOさん:大きく分けて2つあります。1つは社長の意思決定のサポート、イメージで言うと、企業の経営戦略室みたいな感じですね。もう1つは工場の業務改善です。品質面、生産性面で改善した方がいいところがあれば提案して、工場長と一緒にやっていくということを今やっています

Vi Nguyen社の代表商品。写真左はPB製品、右がNB商品です。どちらもベトナム全土で有名です!

Q.最近の会社取り組み、ニュースを教えてください。
CAOさん:スーパーが今すごい勢いで数を増やしています。スーパーの拡大期であり、市場とか個人商店からスーパーへ移行する過渡期なんですよね。うちは市場にも卸してますがメインはスーパーなので、基本的にはその出店スピードに間に合うように、納期に決して遅れないように、ということに気を使っています。
最近のニュースは、文藝春秋2019年10月号にうちの会社の誕生秘話が載りました。主人公は僕の父なんですが取材してもらって、読み切りのノンフィクション小説みたいな感じで書いてもらいました。それを日本に支社のあるベトナムの通信社が見つけて、これをベトナム語にして自社の媒体に流したんですよ。日本に長くいたベトナム人がベトナムに戻って豆腐屋を始めた、っていうサクセスストーリーではないんですが。ベトナムで一番大きな通信社だったので、やっとベトナムに認められたんだと父は喜んでましたね。それをきっかけに新たなお話もいただけた半面、競合を刺激してしまったようでスーパーの売り場にそれまではうちの豆腐しかなかったところが他社が営業をかけて他社製品も並ぶようになってしまったということはありました。でも文藝春秋は日本の月刊誌で発行部数が第1位の由緒ある雑誌ですので、それにベトナム人が載ったということをベトナムの人達に知ってもらえたら、誇らしい気持ちになるんじゃないかなと思います。

Q.これから展開していきたいこと、Caoさんの仕事での夢を教えてください。
CAOさん:中期レベルではお豆腐をもっともっと売っていきたいと思っています。成長マーケットですのでしっかりその波に乗っていきたいですね。うちのお豆腐は日本の技術で作っていますので、日本食文化を一人でも多くのベトナム人に広めていくというのが、中期の目標になります。
長期での目標は、既存のジャイアントを倒すというのは基本的には無理なんですけど、新しいテクノロジーが急速に発展した時には、小さいぽっと出のベンチャーがジャイアントを倒すというようなことが起きるんです。新しいテクノロジーが市場を破壊するんですね。具体的にはGoogleが広告業界を破壊しましたね。Googleが既存業界を破壊して広告業界を牛耳ってますよね。あとはAmazon。Amazonは既存の小売っていう、でっかいウォルマートをぶっ飛ばしましたね。それはテクノロジーの台頭に上手く乗っかって既存の企業を倒すということなんですね。
食品というのは割とテクノロジーの影響を受けにくい、昔ながらのインダストリーなんです。
テクノロジーの波はまだ食品業界には来てないです。来るのは一番最後だと思ってますが、いずれ来ると思ってます。その波が来た時に準備ができていなければタイミングを逃すことになってしまうじゃないですか。いつになるのかわからないけど、テクノロジーの波が食品業界に押し寄せて来た時に戦える構えを作っておきたい。そのためには今は頑張って豆腐を作って1つでも多く売って、会社を成長させたいと思ってます。
10年後になるのか20年後になるのかわかりませんが、その頃だったらもしかしたら戦える可能性はあるんじゃないか、タイミングを逃さず波に乗って食品界Googleみたいなポジションを取れたら面白いなと思いますね。

Q.食品業界の最新動向を教えてください。
CAOさん:食品全体のことで正確なことは言えないですが、食品業界ではベトナムオリジンの会社がどんどん外資系に買収されてます。豆腐シェア1位と3位の会社はもともとはベトナムの会社だったんです。それがどちらも外資系に買収されてます。
たとえば333ビールも買収されてしまったりとか、水産系の会社でCAU TREという会社もCJに買収されました。海外の会社はベトナムのマーケットを狙ってますから、ベトナムの会社は大きくなると買収される、というのはありますね。外資系が頑張ってくれてお金を稼いでくれればベトナム人にとってもプラスだとは思うんですが、ベトナム人の心情からするとやっぱりベトナムの会社に頑張って欲しいなというのはありますね。だからうちの会社もベトナムの会社として残っていきたいと思ってます。

Q.ベトナム人と上手くはたらくために、CAOさんから日本人へのアドバイスをお願いします。
CAOさん:いろんなところで言われ尽くされてることですが、上から目線はやめることです。
僕の言葉ではないですが、カンボジアで成功している方が言っていたことは「深層心理レベルで上から目線をやめること」だと言ってましたね。理屈ではわかっていて口では言っていても、深層心理レベルではやっぱりどこか上から目線なことがあると。それを聞いてなるほどな、と思いましたね。言うのは簡単だけど、深層心理レベルで相手を尊重するには至っていないんです。ではどうすればよいのか。
みなさんベトナムにいてあたかも自分が会社全体のトップで働いているという意識を持っているじゃないですか、でも本社は日本、周りにアドバイスしてくれる人が身近にいないことがほとんどではないでしょうか。これは僕からの思考テクニックの提案なんですが、例えば海外赴任するタイミングが転職の一種だと考えるんです。そうしたら仕事上でちょっと考えが違うなと思うことがあったとしても、頭ごなしに従業員が間違ったことをしているとは思わず頭ごなしに否定はしないはずです。自分が間違っているかもしれないから、もう少し様子を見ようとか理解しようと思うじゃないですか。理解した上で言うとすれば、相手を尊重した形で言うと思うんですよね。もし外様で入って来ていたらそうなると思うんですよね。その感じでベトナムでも現地の人(相手)に接すればいいと思うんです。外様の精神で接して、相手が間違えていると思ってもすぐに直させないで、まず理解する。その上でやっぱり違うと思ったら相手に敬意を持った上で言い方を考えて伝える。それが上から目線ではない、相手を尊重したアプローチなんじゃないかと思います。
僕も工場で働いていますのでそこで気を付けているのは、意見があっても一旦受け止めてすぐには言わない。僕が勢いよくガーッと怒ったとしても、外様で入ってきたら相手は防御をして聞かないと思うんです。よく理解して自分の意見を浸透させるためには、どういう言い方がいいのか工夫しています。

嶋村:最後にCAOさんだからこそわかるベトナム人とはこういう人達だっていうことを教えてもらえますか?
CAOさん:一言で言うとベトナム人はウェットですね。それに対して日本人はドライ。
日本に来ているベトナム人の留学生の友達が何人かいて、一回愚痴を言われたことがあるんです。
日本人とは仲良くなれないと。自分は嫌われているんじゃないか、寂しいと。
要は飲みに誘っても忙しくて来れないとか、遊びに行きましょうと言っていても誘ってくれない。
彼は自分だけそういう態度をされている、疎外されていると勘違いしてしまったんです。
僕はそうではない、あなたが嫌われている訳ではなくて、それは日本人のコミュニケーションスタイルなんだよと教えてあげたんです。ベトナム人はよりウェットなんですよね。人間の友情の繋がりをすごく重視します。日本人はもう少しドライ寄りで実利主義というか、メールやLINEのやり取りで面倒くさかったら返信しなくていいよ、とか既読スルーされたとしても忙しいのかなと受けとめて、友情関係がだめになることはないですよね。
ベトナム人が友情の繋がりをより重視するのはベトナムの社会的背景があるんです。ずっと戦争をしてきて裏切る裏切られるという歴史を歩んできてますので、今でも仕事の中でも裏切る裏切られるがたくさんあるんです。その中で信用できるのは友人なんです。ウェットな関係性の中で社会を築くという文化がベトナムにはあります。
一番典型的なのは社員旅行に対する向き合い方です。日本人は社員旅行大っ嫌いな人が多いのに対し、ベトナム人は社員旅行が大好きです。日本人は土日まで会社の人と一緒にいたくないとか、上司の自慢話を聞かされたくないとか思いますよね。仕事は仕事。土日はやめてくれと特に若い人達は思いますよね。それはドライな関係なんですね。それに対しベトナム人は社員旅行しないとクレームが出るくらい大好きです。これは日本人とベトナム人の性格の違いをよく表す事例だと思います。
ベトナム人はとてもウェットである、日本人はドライということを認識して、ベトナム人と接する時にウェット寄りに、過剰なくらいにウェットに接すると上手くいくんじゃないかと思っています。

社員さんと食事会にて。うまく組織を運営するためにも、飲みニケーションは必須

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インタビュアー
ハノイ支店マネジャー 嶋村 拓史(しまむら・たくじ)
E-mail: takuji.shimamura@hrnavi.com
Tel: 090 1828 660

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