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2021年2月3日

人材から人財への道のり::VOL 40:質問のなさ

過去のブログで(HRnavi Blogs - 人材から人財への道のり::VOL 5:: 意見は今、ありません。)なぜスタッフからあまりにも意見が上がってこないかについて、考えました。簡単に言うと考えていないから意見を言えないわけですが、突き詰めて考えると、思考に必要不可欠である質問力が弱いから、思考力そのものも弱くなると分析しています。

みなさんの職場で、よく質問し、物事をしっかりと捉えようとする、いわゆる賢い社員はどれほどいますか?平均して見ると日本人社員と比較して、ベトナム人社員はあまり質問してこないように思います。(個人差の強い比較論であり、当てはまらない職場もあると思います。)その理由として、質問する習慣そのものが家庭内または学校で育成されてこなかったからではないかと私は思っています。

私の実家もそうでしたが、ほとんどのベトナムの家庭において、親から子供に対しての会話は断定口調や命令口調が多いように思います。何を食べたいの?、どうしたいの?、どう感じているの?、というような質問はほとんど記憶にありません。一方で、勉強しなさい!、(大学卒業まで)恋愛してはいけない!、がよく言われるセリフで、夢に出てくることもしばしばありました。学校も家庭の延長のようなもので、先生の教えが絶対的で、異議を唱えると変な子供として仲間外れにされます。先生もあえて、子供がどう思うかいちいち聞かない。暗記力があり、従順な子こそ先生たちに好かれ、よい成績を収め、両親の自慢の子供となります。そのため静かで質問の少ない子が多くなります。

そうやって育った質問しない社員をもつ日本人はどのようにアクションを取るのでしょうか?
世話好きな日本人、あるいは相手を困らせたくない日本人はどんどん手を差し伸ばして、喜んで手助けするわけです。しかし、その過程で、ローカルスタッフは自ら質問して業務改善しなくても、業務指導は日本人がやってくれると気づき、自分で考えてリスクを取るぐらいなら、あえて考えないで日本人の指示のもと、忠実に動けばよいと考えるようになります。主体性が低下する一途になります。

質問力または思考力を鍛えるためにはこちらから質問を投げていくしかないと思います。
最初は何を質問しても、びっくりして攻められるのではないかと思っているようで、答えは言い訳から入ります。数カ月経過すると、やっと言い訳がなくなり、答えを先に言ってくれます。それから、仕事のターゲットを設定して、追及することにします。なるべくシンプルで、毎日成果を上げられるような目標にすることで、毎日質問できるようになります。これを半年ぐらい続けて少しづつ成果が出始めると、自信がつき自分なりの意見も少しずつ言えるようになります。もっと意欲の高いスタッフだと、言われるぐらいなら、先にやってしまおうと考え、一変してとてもパフォーマンスの高い人材になります。

弊社のベトナム人スタッフの成長はこんな感じです。全くもって、近道がありません。
一方で、質問する側にも、コツがあります。自分(管理者)が分かっていることを、あえて機械的に質問して、相手を追い込む、あるいは相手を馬鹿にするのはタブーです。(自己反省になりますが、私も過去には少なからずこの傾向がありました。)自分の立ち位置では分かっているかもしれないが、どうしても、相手(部下)の立場では分からないので、質問させてもらっている。その上で、一緒に問題解決する。このぐらいの姿勢が必要だと思います。

次回は「信頼関係の構築」について、考えたいと思います。

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プロフィール
Nguyen Dinh Phuc
E-mail: nguyen.dinh.phuc@hrnavi.com
Tel: 097 869 8181

国費留学生として、選ばれ、1996年~2006年まで日本で留学と仕事を経験したのち、ベトナムに戻り、日系企業に対して、経営助言のコンサルティングをしました。ベトナム人は比較的にレベルが高くないという実態をなんとかしたく、2010年からアイグローカルリソースを創設、ベトナムにある人材のレベルアップを会社のミッションに、日々、努力しています。

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