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2022年3月9日

人材から人財への道のり::VOL 52::アシスタントだらけの会社

組織ではトップの指揮命令が末端まで行き渡り、その指示に従って忠実に実行されることが求められるため、企業規模が大きくなればなるほど、それはまるで軍組織のような役割になり、より小さい専門部隊に分けられます。その部隊の中に、トップを置いて、その部隊の管理責任を負わせるわけです。管理部、営業部、経理部、人事部にはそれぞれ部長が存在するということは、一般的な組織構成と言えるのではないでしょうか?大企業であれば、上記コンセプトは正しく、疑いの余地は全くありません。しかしながら、中小企業ではどうでしょうか?

考えてみれば、世の中の組織論のほとんどは偉い先生たちが大企業を対象に研究したもので、中小企業にとって有効な組織はどんなものなのかということについては、これといった正解がなく、皆さん試行錯誤して会社運営されているように思います。当然ながら、私もその中の一人です。ビジネスは組織からということで、まずはそれぞれの部署にマネージャーを採用します。そのマネージャーの責任で、部内のメンバーを採用し、管理してもらいます。年度ごとに全社の事業計画を策定して、それぞれ各部署に落とし、一年を通して事業を遂行してもらいます。ところが、大企業のように機能すると期待していると、次第に中小企業ならではの落とし穴が見えてきます。中小企業での一番大きな弱点は数年おきにマネージャーが離職することです。転職を考えるのは優秀な人材が多く、一社に長く留まるより、ステップアップとして上を目指すことは理解できますが、それではいつまでたってもトップ人事が安定しません。

もちろん、マネージャーがしっかり定着して、立派な経営をされる会社さんもたくさんあるはずです。ここで、マネージャーを置かないで非常に上手く会社経営している私の友人(女性社長)の例を紹介したいと思います。

まず、びっくりするのは彼女の会社ではマネージャーがいません。マネージャー格の社員がいないなら、せめてリーダーぐらいいるのだろうと思ったら、リーダーもいないのです。いるのは彼女とたくさんのアシスタント、たくさんの一般社員だけです。一般的には各部署にマネージャーを置きますが、彼女の会社ではその代わりにアシスタントを置くのです。実際のところ、そのアシスタント達はよく働き、世間の言うマネージャー達と遜色のないパフォーマンスを出しながら、忠誠心が高く、マネージャーを置く場合より定着がとてもよいのです。実にコスパのよい人事だと言っています。

言葉の遊びのように感じてしまいますが、マネージャーとアシスタントの違いを考えるととても面白いです。まず、アシスタントもマネージャーも仕事を任せられたら、自主的にこなすことに関しては同じです。しかし、マネージャーは自分が好きなように包括的に動かせる組織を持っているのに対して、アシスタントは案件ごとにボスの委任を得ながら仕事をこなすわけです。つまり、自由に行使できる権限を持つマネージャーに対して、アシスタントはボスに対して従属的な存在なのです。そういう意味で、同じ人物でも、マネージャーよりアシスタントのタイトルの方がマーケット価値が低くなり、転職防止の効果もあります。巧妙なやり方だなと感じる部分もありますが、考えてみれば、新卒からアシスタントとして採用して、育てて来ているわけですから、一生アシスタントでも特に変なことではありません。一方で日系企業においては、課長というポジションでありながら、自由な判断を任せられず、何でも稟議を申請するぐらいなら、アシスタントとそう変わらないように感じています。

組織を束ねるボスに、たくさんのアシスタント、そして、その下にはたくさんの一般社員という組織は封建制度を連想しますが、それがこのベトナムには意外と合っているかもしれませんね。

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プロフィール
Nguyen Dinh Phuc
E-mail: nguyen.dinh.phuc@hrnavi.com
Tel: 097 869 8181

国費留学生として、選ばれ、1996年~2006年まで日本で留学と仕事を経験したのち、ベトナムに戻り、日系企業に対して、経営助言のコンサルティングをしました。ベトナム人は比較的にレベルが高くないという実態をなんとかしたく、2010年からアイグローカルリソースを創設、ベトナムにある人材のレベルアップを会社のミッションに、日々、努力しています。

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