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2022年11月2日

人材から人財への道のり::VOL 60::ウィリアム・ジェームズは間違っている。

アメリカの心理学者ウィリアム・ジェームズの名言『心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる。』というものがあります。
この言葉は、日本ではかなり浸透しているようで、よく日本人からこの名言を聞きます。その一つの変わったバージョンとして、「心」を「考え方」に置き換えているものがあります。『考え方が変われば行動が変わる。』ように、考えからの重要性を強調しており、私の感覚として、このバージョンの方がビジネスシーンに引用されているように思います。どちらの言い方も、疑いの余地のない名言でしょう。

考えると、社員の考え方を高める(正す?)ために、様々な取り組みを行ってきました。
よい話を定期的に全社員に配信したり、入社1年未満の社員に順番で本を読んでもらい、朝礼時に感想を発表させたり、読書を奨励するような社内キャンペーンをしたこともあります。いろいろ取り組んできましたが、総括として、残念ながら、意識の高い社員はそれほど創出できているとは思えません。これまでのところ実感できるほどの効果がありませんが、ウィリアム・ジェームズが間違っているはずがない。効果がないのは自分たちの努力が足りていないだけなのでは?継続的に上記のような考え方に基づいて教育を続けています。

ある時、同じ地場経営者の友人と意見交換した時に、気になる発言がありました。「一般社員に考えることを期待してはいけない。そもそも、一般社員は怠け者で、仕事をさぼろうとしているためコントロールしなければならない」そうです。この考え方は私の哲学とは正反対です。私は社員は自分で考える力があり、会社のために一所懸命働いていると思ってきました(思いたいだけかもしれません)。しかし、冷静に考えると、友人の言うことの方が正しい面が多くあることに気づきました。

  • レポートは現状報告で終わり、提案がない
  • 会社のためではなく、どちらかというと自己都合、自分優先
  • 言い訳が多い
  • 他責的である
  • 話が助長、ポイントがぼやけている
  • などなど

そもそも、末端スタッフに考えることを期待しているのは間違っているかもしれません。
ウィリアム・ジェームズの名言は彼のように考える力を持っている人間であることが前提であって、考える力が弱く、考えること自体が面倒と思う人たちにはまったく当てはまりません。考える力の弱い社員には、まずは彼らの考える力を鍛えてあげてから、ウィリアム・ジェームズのいう主体的な変化が期待できるようになります。私なりにウィリアム・ジェームズの名言をベトナム用に書き直すと下記の通りになります。

行動が管理されれば、考える方法を取得できる。
考える方法を取得できれば、自分の考え方ができる。
考え方が変われば行動が変わる。
行動が変われば習慣が変わる。
習慣が変われば人格が変わる。
人格が変われば運命が変わる。

つまり、考える力の弱いベトナム人社員のためには、行動をしっかりと管理して、その過程で考える方法を教えて、さらに実践させます。結果として、考える能力が備わり、そこではじめてウィリアム・ジェームズがいうようなことが当てはまります。

私の友人が社員に要求している考える方法はごく簡単ですが、とても効果的のようで、読者の皆様にも共有したいと思います。

《規定されている報告方式》
①問題定義
②問題の原因分析
③ソリューション提案:最低2つ以上
④会社に求める支援
⑤コミットメント

この報告方式はスタッフ全員に求めているそうです。最初は原因分析が弱かったりして、見出しているソリューションの質が高くないのですが、最低でも2つというルールを設けることで、思い付きで終わらず、考えざるを得ない状況を作っているのがポイントだそうです。そして、忘れてはいけないのが、コミットメントです。コミットさせれば、スタッフが真剣に取り組んでくれます。プラスのスパイラルが働くわけです。

時間のかかる作業ではありますが、考える力のある組織であれば、ベトナムでは最強だと思います。

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プロフィール
Nguyen Dinh Phuc
E-mail: nguyen.dinh.phuc@hrnavi.com
Tel: 097 869 8181

国費留学生として、選ばれ、1996年~2006年まで日本で留学と仕事を経験したのち、ベトナムに戻り、日系企業に対して、経営助言のコンサルティングをしました。ベトナム人は比較的にレベルが高くないという実態をなんとかしたく、2010年からアイグローカルリソースを創設、ベトナムにある人材のレベルアップを会社のミッションに、日々、努力しています。

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