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2024年6月5日

人材から人財への道のり::Vol.76::CSR活動について

私が日本に留学していた時代にも感じましたが、日本では慈善活動がベトナムと比較してあまり盛んではないと思われます。逆に、ベトナムでは慈善活動がよく耳に入ります。

1998年には、非常に大きな洪水がベトナム中部、特にフエに大きな被害をもたらしました。当時、私は和歌山高専の三年生で、ロータリーアクトの会員でした。その際、私はロータリーアクトに慈善活動を行うよう提案しました。幸いなことに、皆が応援してくれ、多くの募金箱を作って町中に置かせていただきました。最終的に50万円余りの金額を集めることができました。

私はそのお金を持って大阪にあるベトナム領事館へ行き、現金を渡した記憶があります。その時、日本人たちは非常に寛大で優しい人たちだという印象を受けました。

しかし、日本で慈善活動に協力してもらった記憶はこれぐらいで、他にはあまり聞こえてきません。その理由を考えたところ、おそらく社会の仕組みに起因していると思います。日本は民主主義国家であり、政府がしっかりしているからです。つまり、国民の税金でインフラを整備し、国民の生活を守り、災害を防止するインフラを作り、万が一災害が起きたら政府の予算で救済することができます。

一方、共産国家であるベトナムでは、国の財源が常に不足しているため、インフラ整備も十分にできておらず、国民の生活保護や災害リスクに対する財源も確保できていないのが現状です。これが昔から続いており、今も将来も国民はその現実を認識しています。そのため、政府に頼らずに民間同士で助け合うことが当たり前になっています。

そういう意味で、ベトナム人はお互いを助け合う意識が強く、慈善活動に対する関心も日本人以上に高いはずです。言い換えると、日本人があまり考えていない、または気にしていない部分かもしれません。実際に、慈善活動やCSR活動を積極的に行っている日系企業は私の知る限りでは少ないです。

この理由として、上記のような社会の仕組みに加えて、CSR活動を行いにくいポイントもいくつかあります。

1. 国の介入: ベトナムでは、慈善活動を行う際に赤十字や国が認めている組織を通さなければならず、公式な慈善活動でなければコストとして認められません。そのため、自由度が制限されます。

2. NGOの少なさ: ベトナムでは、NGOを設立するのが面倒で、国が定めているいくつかの共産党外部組織に属していなければ基本的に認められないため、政府と関係のないNGOは極めて少ないです。

3. 慈善活動の種類の限界: そのため、行える慈善活動の種類が限られています。例えば、病院にいる親のない子供たちのための義援金や奨学金の提供などが主であり、選択肢があまりありません。

4. 活動の多様性の欠如: このように、慈善活動のやり方にバラエティがないため、企業も困ることがあります。できれば自分たちのビジネスに少しでも関連性を持たせたいと考える企業が多いですが、現行の活動形態ではそのニーズに応えられない状況です。

このような理由から、日系企業がベトナムでCSR活動を行うのは難しい面があります。

CSRの話で言うと、私の留学時代の後輩が幹部として働いているTOTOベトナムの取り組みは非常に素晴らしいものがあります。TOTOベトナムはベトナムの山奥で学校を建て、その運営費と共に学校を提供するボランティア活動を行っています。2017年から続いており、これまでに20校近く建設することができました。この活動には多くのコストと労力がかかり、継続的に資金を集めるためには大変な努力が必要です。

この資金は全部TOTOベトナムから出すわけではありません。TOTOベトナムも資金を提供しますが、組合や工業団地運営企業、税関など、様々な人たちからの資金提供を可能にするプラットフォームが整備されています。ベトナム人は個人的に少額の寄付をすることに慣れており、私の後輩が旗振り役となって小さな金額を集め、大きな学校を建て、継続的に何年も続けることが、参画する人たちのプライドにもなります。それが輪となってTOTOベトナムを応援するコミュニティになるに違いありません。

TOTOさんのCSR活動は、ブランディング、社員のエンゲージメント、顧客ロイヤリティ向上というCSRの目的において、本当によくできています。

そこで、私も何年も悩んできたCSR活動について考えました。弊社のような小規模な会社では、大規模なCSR活動は難しいですが、何も取り組まないのは社員満足度の観点から良くないと思っています。社員には、働いている会社がしっかりとCSR活動を行っているという誇りを持ってもらいたいです。また、単にお金を寄付するだけの慈善活動は、思い出としては薄く、会社の日常活動とリンクしていないため、満足できる活動がなかなか思いつきませんでした。

最近、ようやく思いついた活動が植林活動です。日本人の皆さんはあまり知られていないかもしれませんが、ベトナムでは年々森林伐採が加速し、森林面積がかなり減少しています。特にメコンデルタでは、最近の気候変動によって干ばつが多くなり、マングローブが破壊されています。そこで、私たちが少しでもマングローブを植える活動を行うことで、環境保護に貢献できると考えました。

弊社のビジネスは人材紹介ですので、求人オーダーをいただいているお客様と登録者の両方が重要な存在です。今回のCSR活動では、この二つのステークホルダーとの関わりの中で、ビジネスの各ステップを評価し、点数化します。一定の期間ごとにその点数を集計し、それを植林場の木の数に置き換えます。

具体的には、お客様と登録者とのやり取りや成果を基に木の数を算出し、社員を代表して会社がその数に応じた植林活動を行います。そして、定期的に関わっていただいているすべてのクライアントや登録者に対して、その活動報告を行います。

このようにして、お客様と登録者の協力のもとで得た成果を形にし、環境保護に貢献することで、皆さんにCSR活動の意義を実感してもらえるよう努めます。

御社とお取引がある際には、必ずお礼として数本の樹木を植え、御社の代わりに植林活動を行います。仕事の損得だけでなく、一緒に地球のために貢献していると考えるだけで、私たちも幸せな気分になります。いつもお取引していただき、大変感謝しています。

以上が、弊社のCSR活動についての情報共有です。皆さんが取り組んでいるCSR活動についても、機会があればぜひお聞かせください。

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プロフィール
Nguyen Dinh Phuc
E-mail: nguyen.dinh.phuc@hrnavi.com
Tel: 097 869 8181

国費留学生として、選ばれ、1996年~2006年まで日本で留学と仕事を経験したのち、ベトナムに戻り、日系企業に対して、経営助言のコンサルティングをしました。ベトナム人は比較的にレベルが高くないという実態をなんとかしたく、2010年からアイグローカルリソースを創設、ベトナムにある人材のレベルアップを会社のミッションに、日々、努力しています。

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