2025年2月12
吸収する情報が多いほど賢くなるのは、ある意味当たり前のことです。情報量が多いと脳が刺激を受け、それによって思考スピードが向上するという研究結果も数多くあります。 情報が多い人は明るく、思考スピードや対応力、コミュニケーションの速さなど、さまざまな面で優れているように感じます。私の視点から見ると、日本人はベトナム人よりも思考スピードが速く、一緒に話していると、日本人のほうが圧倒的に多くの質問を投げかけてくる印象があります。 一方で、ベトナム人との会話では、日本人ほどの質問の多さは感じられません。これは、日本社会が情報にあふれており、日常生活の中で自然と多くの情報に触れる機会が多いため、無意識のうちに頭が鍛えられているからではないかと思います。
日本のテレビコンテンツは世界でもトップクラスの質を誇り、また読書文化も非常に発展しています。日本でベストセラーとなる書籍は100万部に達することもありますが、ベトナムではせいぜい1万部程度で、その規模には大きな差があります。 日本では、テレビドラマや雑誌、特に大人向けの雑誌、園芸、趣味、スポーツ、週刊誌などの分野が非常に発達しています。一方、ベトナムではかつて娯楽雑誌が存在していたものの、現在ではほとんど読まれなくなり、衰退しているのが現状です。 では、ベトナムの人々はどこから情報を得ているのかというと、主に情報サイト、Facebook、TikTok、YouTubeなどのオンラインメディアが中心となっています。日常的な短い情報を得るにはそれで問題ありませんが、深みのある情報や紙媒体の雑誌・書籍のように、文章でじっくりと表現されるコンテンツは読む人が減少しつつあり、そうした文化が衰退している状況です。
そこで、情報の量と思考の状態の関係を示す図を作成しました。
ここでは、横軸が「悩みの度合い」(少ないから多い)、縦軸が「理解度」(低いから高い)を表しています。すると、この関係を4つのカテゴリーに分けることができます。
- A: 知らないし、悩まない
- B: 知らないが、悩む
- C: 知っていて、悩む
- D: 知っていて、悩まない
A.「知らないし、悩まない」
この状態は、どちらかというと幼く、まだ成長していない、子供のような状態です。周りのことをあまり知らないため悩むことはありませんが、周囲に守られているので問題なく過ごせます。
B.「知らないが、悩む」
これは、どちらかというと心に不安や悩みを抱えやすい人の状態を指します。情報が不足しているため、物事を正しく理解できず、悩みが生じてしまいます。
C.「知っていて、悩む」
この状態は、大人の特徴といえます。さまざまなことを知るにつれて、それに伴う悩みも増えていきます。知識が増えるほど、考えることが多くなり、悩みも深まるのです。
D.「知っていて、悩まない」
この状態の人は、物事を極め、悟りを開いたような存在です。豊富な知識を持ちながらも、それをうまく理解し、感情のコントロールや心のマネジメントができています。また、自分の周囲の環境もうまく整え、安定した心の状態を維持できる人といえます。
では、一般的な人間の成長はどのように進むのでしょうか。
まず、成長の初期段階では「知らないし、悩まない(A)」状態にあります。これは幼い子供の頃に当てはまり、周囲に守られているため、大きな悩みを抱えることはありません。 次の段階として、一部の人は「知らないが、悩む(B)」状態に入ることがあります。情報が不足しているために不安を感じ、悩みを抱えやすくなる状態です。ただし、多くの人はこの状態をではなく、矢印のように、「知っていて、悩む(C)」へと成長していきます。 成長するにつれて、さまざまなことを学び、経験を積み、失敗を重ねながら学んでいきます。そして、考えなければならないことが増え、責任も増していきます。この責任とは、仕事の責任、家族の責任、社会的な責任などを指し、それに伴って悩みも多くなっていきます。
その中で、人は問題解決能力を磨き、徐々に悩みを減らしていきます。最終的には、多くのことを知りながらも自信を持ち、あまり悩まない状態、つまり「知っていて、悩まない(D)」へと到達します。一般的には、このような成長過程をたどると考えられます。
しかし、ベトナム人に関しては、前述の考察のように、日本人と比べて入ってくる情報量が少ないため、幼いままで成長が止まってしまう人もいると考えられます。その一方で、多くのことを知り、多く悩む「知っていて、悩む(C)」状態に至る人も存在します。さらに、そこから問題解決能力を身につけ、「知っていて、悩まない(D)」状態へと成長する人もいますが、その数はおそらく少ないでしょう。
総じて、ベトナムでは幼いままの人が多く、その一部が知識を増やし、多く悩む段階(C)に進む傾向があります。しかし、日本と比較すると、「知っていて、悩まない(D)」に到達する人の割合は少ないように感じられます。
そうは言っても、ベトナムは生活しやすい国です。災害が少なく、自給自足が可能な国であり、リスクも比較的低いため、たくさんのことを知らなくても生きていくことができます。
そのため、「知らないけれど幸せでいられる」というAの状態も、ある意味では合理的だと言えるでしょう。国が違えば、そこでなり得る状態も異なるのは当然のことです。
最終的に、A(知らない・悩まない)もD(知っている・悩まない)も、どちらも悩まない状態であり、ある意味では幸せだと言えます。日本人の場合、多くはAからC(知っていて・悩む)を経てDへと成長していきますが、ベトナム人の多くはAのままで幸せでいるかもしれません。純粋であるがゆえの幸せとも言えるでしょう。もちろん、Aの状態からCを経由せずに直接Dに到達できれば理想的ですが、現実的にはそれはほとんど不可能です。人間は悩むことで問題解決能力や感情のコントロールを学ぶため、悩みの過程を飛ばすショートカットはあり得ません。
したがって、ベトナムの労働環境においては、単純作業を担当する末端のスタッフはA(知らない・悩まない)のままで残すか、長期的な育成プロセスを通じてAからCを経てDへと成長してもらうか、どちらかの視点が必要になるかもしれません。
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国費留学生として、選ばれ、1996年~2006年まで日本で留学と仕事を経験したのち、ベトナムに戻り、日系企業に対して、経営助言のコンサルティングをしました。ベトナム人は比較的にレベルが高くないという実態をなんとかしたく、2010年からアイグローカルリソースを創設、ベトナムにある人材のレベルアップを会社のミッションに、日々、努力しています。
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